メタボ検診の無駄

投稿者: 投稿日時: 2009/04/24 9:03:53

日本の医療は病気の治療という側面が強く、保険診療も病気にしか認められてきませんでした。出産がその最たるものです。

さて、最近予防治療が医療費節約の観点から注目されています。そのひとつとしてメタボ検診(メタボリックシンドロームの検診)が昨年4月から始まりましたが、かなり誤解があるようなので指摘しておきたいと思います。

そもそもこれは40-74歳の国民の義務らしいですが、義務なのに自己負担がある(国保で1250円程度)というのも解せません。これはおそらく健康増進法の流れでしょう。

ただ健康増進法では、公共機関に禁煙分煙の義務を課しましたが、今回は保険者にメタボ検診の義務を課しました。上手に個人に対する義務化を避けているのです。

問題はメタボ検診が当初の目論見どおりの効果を果たすかという点です。前提条件として腹囲が男性85cm、女性90cmとなっており、これが内臓脂肪を反映するとされます。

そのこと自体はよいのですが、やや基準がきつすぎる。米国では男性105cm。女性95cmです、人種差を超えてこちらのほうが適切だと考えます。日本の基準ではおそらく対象男性の5割が該当するでしょうから、これらの人たちが病院におしかければどうなるでしょうか、救急医療や一般医療はどうなるの?

これについても厚生省は言い訳を考えて、メタボ検診はどこの医療機関でもできるわけではなく、医療機関に併設される検診センターでおこなうのです、しかもその設置基準がまた意味もなくきびしい。禁煙治療を許可した場合と同じやりかたです。

メタボリックシンドロームというのは、米国のリーブンという糖尿病学者がシンドロームXとして発表した概念に基づきます。つまり肥満、高血圧、高脂血症がインスリン感受性を低め、動脈硬化を促進するというのです。

つまりメタボは動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞の危険性が高いということです。しかし単に肥満しているだけでは問題になりません。むしろ小太りのほうが長生きするという調査結果があるほどです。

中性脂肪が150mg・dL以上か善玉のHDLコレステロールが40mg・dL未満、高血圧、空腹時血糖126mg。dL以上のうち3条件をみたすものがメタボリックシンドロームです。

特に血圧測定には問題が多く、血圧というのは体位、運動、精神的影響で簡単に変動すので、はたして135/85mmHgという基準がいいのか疑問です。ちなみに私はコレステロールが130mg/dL、血圧が120.70mmHgで、空腹時血糖70mg/dLですからまったく該当しません。

たしかにメタボは生活習慣と関係があります。つまり酒タバコがいけないのです。ですから、費用効果からいえば、メタボ検診に莫大な医療費を投入するより、タバコを1箱1000円くらいにして禁煙を促進するほうが有効です。

厚生官僚も目的意識をもって仕事をしているのでしょうが、そのやりかたがいつも拙劣なのはどうしてでしょうか。医師会との協調が十分できないせいもあるかもしれません。医師会ももう少し営業的立場ではなく医学的立場から厚生省と折衝してほしいものです。

私事ですが、先日UHBの「のりゆきのトークで北海道」という番組に出演したとき、たまたまナショナルから皮下脂肪計をためしました。腹部の皮下脂肪が31mmあって、肥満なのが放映され、恥ずかしかったです。もっともこんな機械がなくても、指でつまんでその間隔を半分にすれば皮下脂肪の厚さがわかります。

これをおさえることが食生活の改善にとって大事でしょう。もっとも、食事習慣ほど矯正が難しいものはないというのが、私の糖尿病専門医としての経験でした。

いろいろな減量法が紹介されています。いわく低インスリンダイエット、等々。ほとんどが医学的に不適切で、リバウンドをきたし、知識のない人ほど騙されています。減量法には二種類しかありません。減食か運動です。

減食だけだと、筋肉が衰えます。運動だけだと筋肉マンになって、皮下脂肪が乏しくなります。両者のバランスの上にBMI(体重÷身長÷身長)20前後を達成することが大事でしょう。

ともあれ、最近の正常値は狭すぎて、一億皆病気という傾向になっています。医師会の沿う倍上手かと邪推したくもなるというものです。懸命なる国民の皆様は、自分の健康の基準を自分でよく考えて、サプリメントだ健康体操だとやたら金をかけずに一日1万歩という運動だけで健康を保持していきましょう。

これがもっとも安全な運動なのです。脈拍数をやたらとあげる運動は中年以降は禁物です。スポーツ戦車が長生きしない理由もそこにあります。ちなみにお脈拍数の限度は190-年齢だということを覚えておいてください。私も万歩計をつけていますが、すぐベルトからはずれて落としてしまうのが悩みです。


これまでのコメント

  1. 浦島太郎 :

    集団検診なんざ全部辞止めて、早く死んでもらわないと、日本が年寄りで沈没してしまう
    でしょう、私もその一人ですが、覚悟は出来てます。
    最近は検診なんぞ全部けとばしてる、カネも無いし。

  2. 匿名 :

    それも一つの見識ですな
    生殖が終了してから寿命が長いのは人類だけですから
    楢山節考もそのへんを指摘してるのでしょう

  3. 匿名 :

    死を選択するハードルが高すぎるんだよな。
    ある程度の年齢になったら、楽しくとまでは言わないけど、たんたんと死を選択して苦しまずに旅立つのも良いと思う。今の時代、生に執着しすぎ、価値観を変えても良いのでは?

  4. 匿名 :

    愚の骨頂とも言えるメタボリック騒ぎ。そもそも”メタボリック”などという、原義も中身もよく分からない”カタカナ言葉”が、突如マスコミに登場し始めたときは要注意。背後には、医薬業界、医療保険業界、志の低い大学医学部教授、アメリカ一辺倒の似非経済学者達が、必ず結託している……。竹中・西川・宮内といった関西の悪仲間と同じように、製薬業は道修町大阪ですから、これまた関西の悪仲間が仕組んだのではないかと、つい疑ってしまいます。もしガンになったらこの方の病院でと思わせる、帯津良一先生という、御著書の中でしか会ったことはありませんが、魅力的な医者がおられます。作家五木寛之との対談「健康問答」(平凡社)の中で、「問:メタボリック症候群は、ほんとうに危険か”に対して、「答:メタボリック症候群の基準値には、ほとんど注意を払う必要はない。メタボリック症候群なんて、お節介が過ぎるのではないか」と明言されています。世の中の不景気とは無関係に、我が世の春を謳歌し続ける医薬業界を、これ上太らせたら、それこそ”超メタボリック症候企業群”になってしまう……。

  5. 匿名 :

    メタボ検診は、金を自己負担するなら、ただの値上げの為の口実でしかないから、医療費の掛かった会社の保険料を上げれば良い。

    予防検診は、その会社の考え方である、保険料を上げるか、検診で費用負担するかを選択させれば良い。

  6. 匿名 :

    メタボ検診なんかやるより、肥満者から肥満税をとって国連食料機構に寄付するというのはどうだろう?
    日本も国内だけでなく、国際的な配慮が必要だろうよ

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